牡蠣よりは海苔をば老の売りもせで   芭蕉

芭蕉庵』より

貞亨4年春。
 『去来抄』に、「去来曰く、古事古歌を取るには、本歌を一段すり上げて作すべし、喩へば、『蛤よりは石花<かき>を売れかし』といふ西行の歌を取りて、『かきよりは海苔をば老の売りはせで』と先師の作あり。本歌は、同じ生物を売るともかきを売れ、石花は看経<かんきん>の二字に叶ふといふを、先師は生物を売らんより海苔を売れ、海苔は法<のり>にかなふと、一段すりあげて作り給ふなり。『老』の字力あり」とある。
 なお、ここにある西行の歌とは、「おなじくはかきをぞ刺して乾しもすべき蛤よりは名もたよりあり」を指している。


俳句は和歌からきていて、和歌は昔の中国の詩などからの引用も、それが学識というもの。
たくさんの事を知っていて、それをいかにポイと放り出すか、
浅学の一夜漬けの到底及ばないところ!