長編を読み終へし窓烏瓜

石井桃子『幻の朱い実』
Nちゃんが昔の先生からすすめられて読まれた、というのに興味を持って読み始めたのですが、最初のほうはもうひとつ気がのらなくって、このへんでギブアップしようかと正直思いました。途中、旅行に出かけたり、コーラスの発表会が2つもあったり、義兄の逮夜が毎週でくたくたになって。でも、枕元においてあるのでなんとなく読んでいくうちに、ふと、思い当たることがありました。
このごろは忙しさにかまけて、ゆっくりと読書を、という気分から程遠い毎日。でも、思い出したのです。若い頃、そのときそのときの心の機微を綴っていけば、ある一人の人生のドラマが書けるのだと思っていたことを。『嵐が丘』のように一つの小説しか書かなかった作家にも、ひどく感銘を受けた若い頃を。
でも、勉強もせず、努力もしないで、そんな大それたことはもう夢のまた夢。多分、私の高校の恩師が数十年後にお会いしたとき「夢見る夢子さんだったね」と言われたのも、このへんのことでしょう。


はじめのほうはNちゃんに、とおっしゃった先生から推測して、主人公明子をNちゃんに重ねていました。なにしろ、石井桃子といえば『ノンちゃん雲に乗る』しか知らなかったのですから!
最後(本題の蕗子のほう)の2、3日は4時半まで読んでいました。読み終えて、著者にかなりの興味。調べてみると、なんと『プーさん』『星の王子さま』『うさこちゃん』『ピーターラビット』!!
菊池寛太宰治井伏鱒二吉野源三郎!!
なんと自分のものしらずを恥ずかしいと思う一方、すばらしい出会いに興奮したものでした。

文章を推敲する余裕もありません。ただ、この感激を記したくて書いています。
「烏瓜」の花は今年の夏に、たまたま、友人から写真をいただいていました。それも偶然でしょうか。
掲載の写真はwebでお借りしてきたものです。http://www.hana300.com/index.html